夏の厳しい暑さがやってくると、「少しでも快適に過ごしたい」「できれば電気代は抑えたい」と考えるのは自然なことですよね。「除湿機をクーラー代わりに使えないだろうか?」と検索されたあなたも、きっと同じお気持ちなのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、除湿機だけで部屋を涼しくすることはできません。むしろ、運転中は熱を放出するため室温は上がってしまいます。しかし、だからといって除湿機が夏に役立たないわけではありません。湿度をコントロールすることで、私たちの「体感温度」を大きく改善してくれるのです。
この記事では、除湿機がクーラー代わりにならない科学的な理由から、不快指数との関係、冷風機能付き除湿機やスポットクーラーとの根本的な違い、そしてエアコンと賢く併用して電気代を節約する具体的な方法まで、専門家の視点から徹底的に解説します。
- 除湿機は部屋を冷やす機能はなく、むしろ室温を上げる
- 湿度が下がると体感温度が下がり、涼しく感じられる
- 冷風機能付き除湿機やスポットクーラーとは仕組みが違う
- エアコンとの併用や使い方次第で夏の快適性が向上する
除湿機はクーラー代わりになる?仕組みと限界を徹底解説
- 結論:除湿機だけでは部屋は涼しくならない理由
- なぜ涼しく感じる?湿度と「不快指数」の深い関係
- 除湿機の種類別!室温上昇と電気代を徹底比較
- 「冷風機能付き」は涼しい?スポットクーラーとの違い
結論:除湿機だけでは部屋は涼しくならない理由

「除湿機をクーラー代わりにしたい」という期待とは裏腹に、除湿機には部屋の温度を下げる能力はありません。それどころか、運転中は機器から熱が発生するため、締め切った部屋で使うと室温は確実に上昇します。これは除湿機の基本的な仕組みによる、避けられない事実です。
除湿機には主に「コンプレッサー式」と「デシカント式」の2つの方式がありますが、どちらも運転中に熱を放出します。
特にデシカント式は、内部の乾燥剤に吸着した水分をヒーターで加熱して取り除くため、その熱がそのまま排出されます。結果として室温より3~8℃も高い温風が出ることになり、衣類乾燥には効果的ですが、人がいる空間で使うと暑さを増してしまいます。
一方、コンプレッサー式はエアコンの除湿機能と同じ仕組みで空気を冷やして結露させますが、機器を動かすコンプレッサー自体が発熱します。そのため、排出される空気は室温よりわずかに高くなります。
このように、どの方式の除湿機も熱交換というプロセスを経るため、結果として室内に熱が加わります。したがって、除湿機を「部屋を冷やす道具」として使うことは、原理的に不可能であると理解することが重要です。
なぜ涼しく感じる?湿度と「不快指数」の深い関係

除湿機は室温を上げるにもかかわらず、私たちが「涼しくなった」と感じることがあるのはなぜでしょうか。その鍵は、気温と湿度の両方から算出される「不快指数」にあります。人間の体感温度は、温度計の数字だけで決まるわけではありません。
湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなり、気化熱で体温を下げるという体の自然な冷却機能がうまく働きません。その結果、ジメジメとした不快な暑さを感じることになります。
除湿機は、この不快感の原因である「湿度」を直接的に取り除きます。空気が乾燥すると汗がスムーズに蒸発できるようになり、体の熱が効率よく奪われるため、実際の室温が同じでも、あるいは少し高くても、体感的にはずっと涼しく快適に感じられるのです。
この感覚は「不快指数」という指標で客観的に示せます。不快指数は、DI=0.81×T+0.01×H×(0.99×T−14.3)+46.3(T:気温℃, H:湿度%)で求められます。例えば、気温30℃・湿度80%では不快指数は約83で「暑くてたまらない」レベルですが、除湿機で湿度を60%に下げると不快指数は約80に低下します。
このように、除湿機は室温ではなく湿度を下げることで「不快指数」を下げ、夏の暮らしの質を向上させる家電なのです。
除湿機の種類別!室温上昇と電気代を徹底比較

除湿機を選ぶ際、方式による特性、特に「室温上昇」と「電気代」の違いを理解することは非常に重要です。
コンプレッサー式
エアコンの除湿と同じ仕組みで、夏場の除湿能力が高く、消費電力が少ないのが特長です。1時間あたりの電気代は約5円~8円と経済的。ただし、冬場は能力が落ち、運転音が大きい傾向があります。室温上昇は1~2℃程度と比較的穏やかです。
デシカント(ゼオライト)式
乾燥剤で水分を吸着しヒーターで温めて除湿します。冬場でも能力が落ちず、軽量で静かですが、ヒーターを使うため消費電力が大きく、室温が3~8℃と大幅に上昇します。電気代の目安は1時間あたり約9円~16円です。
ハイブリッド式
コンプレッサー式とデシカント式を組み合わせ、季節に応じて自動で切り替えるため一年中効率的ですが、本体価格が高く、サイズも大きい傾向があります。
夏場に涼しさを求めて使う場合、室温上昇が穏やかで電気代も安い「コンプレッサー式」が最適です。安価なモデルに多いデシカント式は、夏のリビングなどで使うと逆に暑くなってしまうため、使用目的に合っているか購入前に方式をしっかり確認しましょう。
「冷風機能付き」は涼しい?スポットクーラーとの違い

「冷風機能付き除湿機」という言葉は魅力的ですが、クーラーの代わりにはなりません。その理由は「スポットクーラー」との構造的な違いにあります。
「冷風機能付き除湿機」は、基本的にコンプレッサー式の除湿機です。除湿の過程で生じる冷たい空気を本体の前面から送風する機能で、その風に直接当たれば涼しく感じます。しかし、忘れてはならないのが排熱です。冷たい風を出すと同時に、コンプレッサーなどから発生した熱を含んだ温風を、本体の背面から同じ部屋の中に排出しています。結果として部屋全体の熱量は増え、室温は下がらず、むしろ上昇します。あくまで「局所的に冷たい風を感じる」機能です。
これに対し、「スポットクーラー(ポータブルクーラー)」は、室内機と室外機が一体化した移動可能な「本物のエアコン」です。最大の特徴は、運転中に発生する熱い空気を「排熱ダクト」を使って屋外へ強制的に排出する点です。室内の熱を外に捨てることで、部屋全体の温度を実際に下げることが可能です。
つまり、両者の決定的な違いは「排熱を室外に逃がす仕組みの有無」です。部屋を冷やすという目的においては、冷風機能付き除湿機とスポットクーラーは全く異なる製品なのです。
除湿機をクーラー代わりに賢く使う!目的別徹底活用術
- エアコンとの併用で電気代を節約する賢い使い方
- エアコンがない部屋で快適に過ごすためのコツ
- 部屋干しの乾燥時間を短縮する効果的なテクニック
- 効果を最大化する設置場所と日々の手入れ方法
エアコンとの併用で電気代を節約する賢い使い方

除湿機はクーラーの代わりにはなりませんが、エアコンと「併用」することで、夏の快適性を高めつつ電気代を節約するという、非常に賢い使い方が可能です。「どちらか一方」ではなく「両方を同時に」使うという発想がポイントです。
最も効果的な方法は、エアコンの冷房設定温度を普段より少し高め(例えば28℃)に設定し、同時に除湿機を運転させることです。室温が28℃でも、湿度がしっかり下がっていれば、体感的には25~26℃の環境に匹敵する快適さが得られます。エアコンは設定温度を1℃上げるだけで約10%の節電になると言われており、この方法は大きな省エネに繋がります。
また、エアコンの「除湿(ドライ)機能」を使うよりも、専用の除湿機(コンプレッサー式)を使った方が電気代が安くなるケースが多いです。特に、室温を下げずに除湿する「再熱除湿」機能は、冷房運転より多くの電力を消費します。
そのため、エアコンを控えめな冷房運転にし、湿度のコントロールは消費電力の少ない除湿機に任せるという役割分担が、最も経済的で快適な組み合わせと言えます。サーキュレーターで部屋の空気を循環させると、さらに効果が高まります。
エアコンがない部屋で快適に過ごすためのコツ

エアコンが設置されていない部屋で夏の暑さと湿気を乗り切るには、除湿機の使い方に工夫が必要です。人がいる空間で長時間つけっぱなしにすると室温が上がってしまうため、得策ではありません。
ここでのキーワードは「不在時の活用」と「換気」です。例えば、日中過ごすリビングや寝室など、その部屋を使わない時間帯を狙って除湿機を運転させます。外出前や別の部屋にいる間に数時間運転させておき、部屋に入る前に運転を停止します。こうすることで、人がいない間に部屋の湿気だけをあらかじめ取り除き、除湿機本体が発する熱がこもるのを避けることができます。
そして、部屋に入ったら除湿機はオフにし、代わりに扇風機やサーキュレーターを使いましょう。湿度が下がった空気は体感的に涼しく、その状態で風を体に受けることで、汗の蒸発がさらに促進され、より涼しさを感じられます。
もし外の気温が室内より低い時間帯であれば、窓を開けて換気するのも有効です。この「不在時に除湿し、在室時は送風で涼む」という時間差活用は、エアコンがない部屋での現実的な対策として非常に役立ちます。
部屋干しの乾燥時間を短縮する効果的なテクニック

除湿機が持つもう一つの大きな価値は、部屋干しでのパワフルな衣類乾燥能力です。特に湿度の高い季節には欠かせない機能で、生乾き臭の原因菌の繁殖を防ぐには、洗濯後5時間以内の乾燥が重要とされています。
効果を最大化するためのポイントはいくつかあります。
まず、洗面所や浴室など、できるだけ狭い部屋を選び、ドアや窓を完全に閉め切って運転します。除湿する空間を限定することで、効率が格段に上がります。
次に、洗濯物の干し方です。衣類同士の間隔はこぶし一つ分以上あけ、風の通り道を作りましょう。洗濯物が多い場合は、両端に丈の長いもの、中央に短いものを干す「アーチ干し」にすると、空気の循環が良くなります。
そして最も重要なのが、除湿機の風の当て方です。水分は重力で衣類の下の方に溜まるため、除湿機の送風口を洗濯物の下方向に向けるのが最も効率的です。さらに、サーキュレーターを併用して部屋全体の空気を循環させれば、乾燥時間は劇的に短縮されます。これらのテクニックを駆使して、快適な部屋干しライフを実現しましょう。
効果を最大化する設置場所と日々の手入れ方法

除湿機の性能を最大限に引き出し、長く使い続けるためには、適切な設置場所と日々のメンテナンスが不可欠です。これを怠ると、除湿効率が落ちるだけでなく、無駄な電気代がかかってしまうこともあります。
まず設置場所ですが、部屋全体の除湿が目的なら、空気の循環を妨げないよう、できるだけ部屋の中央に置くのが理想です。壁際に置く場合は、吸気口と排気口を塞がないように、壁から少し距離をあけましょう。また、冷たく湿った空気は下に溜まる性質があるため、棚の上などではなく、床に直接置くのが基本です。
日々の手入れで最も重要なのは、2週間に一度程度のフィルター清掃です。フィルターにホコリが詰まると空気をスムーズに吸い込めなくなり、除湿能力が著しく低下し、余計な電力を消費する原因となります。掃除機でホコリを吸い取るだけで十分なので、忘れずに行いましょう。
また、排水タンクの水は、満水になると自動で運転が停止してしまうため、こまめに捨てる習慣が大切です。タイマー機能を活用し、必要な時間だけ運転させることも、電気代の節約に繋がる賢い使い方です。
総括:除湿機はクーラー代わりになる?
この記事のまとめです。
- 除湿機に部屋を冷やす能力はない
- 運転中は排熱により室温が必ず上昇する
- 湿度が下がると体感温度が下がり涼しく感じる
- 夏の快適性向上にはコンプレッサー式が最適である
- デシカント式は室温上昇が大きく夏場の使用には不向き
- 冷風機能付き除湿機は局所的な冷風であり部屋は冷えない
- 部屋を冷やしたいなら排熱ダクト付きのスポットクーラーが必要
- 電気代はエアコンの再熱除湿より除湿機の方が安い傾向
- エアコンを28℃設定にし除湿機と併用するのが最も賢い使い方
- エアコンがない部屋では不在時に除湿し有人時に扇風機を使う
- 効果的な除湿には部屋を閉め切ることが鉄則
- 設置場所は部屋の中央、床の上が基本
- サーキュレーターとの併用で効率は飛躍的に向上する
- フィルター清掃を怠ると電気代が増加する
- 購入前に除湿方式と排熱の有無を確認することが最も重要