突然「USBポートの電力サージ」というエラーが表示されて、お困りではありませんか?このメッセージは、USBデバイスが電力不足に陥っているサインですが、原因は様々です。
この記事では、エラーの本当の意味から、ご自身でできる簡単な初期対処法、Windowsのドライバ設定の見直し、PCの放電、そしてマザーボード故障の可能性まで、根本的な解決策を専門家が徹底解説します。
セルフパワーUSBハブの活用法やMacでの対処法も網羅し、あなたの不安を解消します。
- 電力サージエラーはPCの保護機能が正常に作動した証拠
- 原因はデバイスやケーブル、PC内部の不具合など多岐にわたる
- ドライバ再インストールやPC放電など段階的な対処法が有効
- 電力不足はセルフパワーUSBハブの利用で根本的に解決できる
「USBポートの電力サージ」の基本:原因と初期対処法
- 「USBポートの電力サージ」エラーが示す本当の意味とは?
- 電力サージを引き起こす5つの主な原因
- まず試すべき!5分でできる初期トラブルシューティング
- 何も接続していないのにエラーが出る場合の原因
「USBポートの電力サージ」エラーが示す本当の意味とは?

「電力サージ」という言葉から落雷のような過電圧を想像しがちですが、このエラーは性質が異なります。これは「PCが自らを守るため、USBポートへの電力供給を停止した」という正常な保護機能が作動した証拠です。
具体的には、接続されたUSB機器が、ポートの供給能力を超える電力を要求した際にWindowsがそれを検知。マザーボードなどの重要部品を過電流による損傷から守るため、そのポートを自動的に無効にします。つまり「PCが壊れた」のではなく「PCが故障を防いだ」と解釈するのが適切です。
USBポートの供給電力は規格で決まっています。特に古いUSB 2.0は供給電力が小さく、多くの電力を要する現代のスマートフォンや外付けSSDを接続すると、簡単に許容量を超えてしまいます。この電力のミスマッチが、エラーの根本的な原因となることが多いのです。
規格 | 最大供給電力 | 電圧 | 電流 | 主な用途 |
USB 2.0 | 2.5W | 5V | 500mA | マウス、キーボードなど低消費電力の機器 |
USB 3.0/3.1 Gen 1 | 4.5W | 5V | 900mA | ポータブルHDD、Webカメラなど |
USB Type-C (標準) | 15W | 5V | 3A | スマートフォン、タブレットなど |
USB Power Delivery (PD) 3.1 | 最大240W | 5V, 9V, 15V, 20V, 28V, 36V, 48V | 最大5A | ノートPC、モニター、高性能機器など |
電力サージを引き起こす5つの主な原因

「USBポートの電力サージ」エラーの原因は多岐にわたり、正しく切り分けることが迅速な解決に繋がります。原因はPCの外部から内部まで、主に以下の5つに大別されます。
- USB機器自体の不具合・故障接続したUSB機器の内部回路のショートや故障により、異常な電力を要求することがあります。安価な製品や長年使用した古い機器で発生しやすい、最も一般的な原因の一つです。
- USBケーブルの損傷・劣化ケーブルは消耗品であり、抜き差しや屈曲の繰り返しで内部が断線・ショートすることがあります。見た目に問題がなくても内部で劣化が進んでいるケースも少なくありません。
- 電力供給不足(USBポートのタコ足配線)ACアダプタを使わない「バスパワー」タイプのUSBハブは、PCの1ポート分の電力を複数機器で分け合うため、各機器への電力供給が不足し、エラーを引き起こす原因となります。
- USBポートの物理的な問題ポート内部のホコリやゴミ、金属片などの異物によるショートや、長年の使用による端子の変形・接触不良もエラーの原因となります。
- PC内部の帯電特に乾燥した環境ではPC内部に静電気が溜まりやすく、電子回路に影響を与えて正常な動作を妨げ、誤ったエラーを発生させることがあります。
まず試すべき!5分でできる初期トラブルシューティング

エラーが表示されたら、慌てずに基本的な対処法から試しましょう。多くの場合、簡単な手順で問題は解決します。
まず、エラー画面に「リセット」ボタンがあればクリックします。次に、PCを再起動してください。一時的なソフトウェアの不具合なら、これだけで正常に戻ることがあります。
それでも解決しない場合、原因の切り分けを行います。PCに接続されている全てのUSB機器(マウス、キーボード、外付けHDDなど)を一旦取り外してください。これで問題がPC本体側か、接続機器側かを切り分ける基準ができます。
その後、取り外したUSB機器を一つずつ、別のUSBポートに接続し直します。特定の機器を接続した瞬間にエラーが再発すれば、その機器かケーブルが原因である可能性が濃厚です。
デスクトップPCの場合は、電力供給が不安定になりやすい前面ポートではなく、マザーボード直結の背面ポートで試すのが有効です。
最後に、原因と思われる機器やケーブルを、正常に動作する別のPCに接続してテストします。もし別のPCでも同様のエラーが出れば、その機器やケーブルの故障が確定します。
何も接続していないのにエラーが出る場合の原因

最も厄介なのが「USBポートに何も接続していないのに、電力サージのエラーが頻繁に出る」ケースです。この状況は、問題の原因がUSB機器などの外部ではなく、PC内部のハードウェアにあることを強く示唆しています。
主な原因として、USBポート自体の物理的な故障や、マザーボード上のUSBコントローラー回路のショート(短絡)が考えられます。ポート内部の金属端子が破損・変形して接触していたり、ホコリや異物が原因でショートしたりしている可能性があります。
さらに深刻なケースでは、マザーボード自体に問題があることも考えられます。例えば、自作PCの組み立てミスで、マザーボードの裏側の回路がPCケースの不要なネジやスペーサーに接触してショートを起こしている場合です。
また、長年の使用による電子部品の劣化や、過去の小さな電力トラブルの蓄積が、マザーボード上の電源供給回路を破損させている可能性も否定できません。
このように、何も接続せずにエラーが出る場合は、ソフトウェア的な対処法で解決する可能性は低く、物理的な点検や修理が必要になることが多いと覚悟しましょう。無理に自分で解決しようとせず、専門家への相談を検討するのが賢明です。
「USBポートの電力サージ」の根本解決と予防策
- Windowsのドライバと電源設定を見直す方法
- PCの完全放電で不具合をリセットする正しい手順
- 【最終手段】セルフパワーUSBハブで電力不足を解消する
- Macで「USBアクセサリが無効です」と表示された時の対処法
- マザーボード故障の可能性と修理に出す前の確認事項
Windowsのドライバと電源設定を見直す方法

物理的な故障でない場合、Windowsのソフトウェア設定が原因の可能性があります。以下の手順で、ドライバーと電源の管理設定を見直してみましょう。
- ハードウェアとデバイスのトラブルシューティングツールを実行するWindowsには、ハードウェアの問題を自動で診断・修復する機能が備わっています。設定メニューの「更新とセキュリティ」(または「システム」)内にある「トラブルシューティング」から、「ハードウェアとデバイス」の診断ツールを実行し、画面の指示に従って問題を検出・解決してください。
- USBコントローラードライバーを再インストールするUSBポートを制御するドライバーが破損していると、電力管理が正常に行えません。スタートボタンを右クリックして「デバイスマネージャー」を開き、「ユニバーサルシリアルバスコントローラー」を展開します。表示された全ての項目を一つずつ右クリックし「デバイスのアンインストール」を選択。全て削除後、PCを再起動すると、Windowsが自動で正しいドライバーを再インストールします。
- USBのセレクティブサスペンドを無効にする節電のため未使用ポートへの給電を止める機能ですが、時に動作を不安定にします。コントロールパネルの「電源オプション」から、現在使用中のプランの「プラン設定の変更」→「詳細な電源設定の変更」へ進みます。「USB設定」→「USBのセレクティブサスペンドの設定」を展開し、設定を「無効」に変更します。
- USBポートの電力管理を無効にするデバイスマネージャーの「ユニバーサルシリアルバスコントローラー」内にある各「USBルートハブ」を右クリックして「プロパティ」を開き、「電源の管理」タブの「電力の節約のために、コンピューターでこのデバイスの電源をオフにできるようにする」のチェックを外します。
PCの完全放電で不具合をリセットする正しい手順

原因不明の不調は、PC内部に溜まった不要な電気(帯電)が原因かもしれません。これを解消する「放電」は、多くのトラブルに有効な手段です。必ずPCをシャットダウンし、全ての周辺機器と電源ケーブルを抜いてから作業してください。
- デスクトップPCの場合全てのケーブルを抜き、PC本体の電源ボタンを30秒ほど長押しします。これにより、マザーボード上に残った電気が放出されます。5分ほど待ってから電源ケーブルのみを接続し、起動を確認します。
- ノートPC(バッテリーが取り外せるタイプ)の場合ACアダプターと全周辺機器を外し、バッテリーを取り外します。その状態で電源ボタンを30秒長押しします。5分ほど待ってバッテリーを戻し、ACアダプターを接続して起動を確認します。
- ノートPC(バッテリーが内蔵されているタイプ)の場合このタイプは注意が必要です。本体裏に「リセットホール」という小さな穴があれば、クリップの先などで数秒押して放電します。リセットホールがない場合は、ACアダプターを抜いた状態でバッテリーが完全に空になるまで数時間から数日放置し、自然放電させます。感電や故障の原因になるため、絶対に自分で裏蓋を開けてバッテリーを外さないでください。
【最終手段】セルフパワーUSBハブで電力不足を解消する

外付けHDDなど消費電力の大きい機器が原因でエラーが頻発する場合、最も確実で根本的な解決策が「セルフパワーUSBハブ」の導入です。これは単なる応急処置ではなく、安定したPC環境を築くための積極的な投資と言えます。
USBハブには、PCから給電する「バスパワー」と、ACアダプターでコンセントから給電する「セルフパワー」があります。バスパワーハブは手軽ですが、PCの1ポートの電力を分け合うため電力不足に陥りがちです。
一方、セルフパワーハブは、ACアダプターから大容量の電力を安定して各ポートに供給します。これにより、PC本体の供給能力に依存せず、消費電力の大きい機器でも安心して複数接続できます。エラーの根本原因である「PC側の電力供給不足」を、ハブ自体が独立した電源を持つことで解消する仕組みです。
項目 | バスパワー | セルフパワー |
給電方法 | PCのUSBポートから給電 | ACアダプターでコンセントから給電 |
供給電力 | 低い(PCの1ポート分を分割) | 高く安定している |
メリット | 手軽、安価、配線が少ない | 安定動作、消費電力の大きい機器もOK |
デメリット | 動作が不安定になりやすい | 高価、ACアダプターで場所を取る |
おすすめの接続機器 | マウス、キーボード、USBメモリ | 外付けHDD/SSD、プリンター、Webカメラ、スマホ充電 |
Macで「USBアクセサリが無効です」と表示された時の対処法

Macでは「USBポートの電力サージ」ではなく、「USBアクセサリが無効です」や「USBデバイスを再有効化するには電力消費が多いアクセサリを外してください」といった警告が表示されます。これはWindowsのエラーと本質的に同じで、USB機器への電力供給不足を示しています。
対処法もWindowsと共通する部分が多く、まずは別のポートやケーブルを試す、不要な周辺機器を外す、セルフパワーUSBハブを使用するといった基本的な方法から試してください。
それでも解決しない場合、Mac特有のリセット操作が有効です。
- SMC(システム管理コントローラ)をリセットするSMCは電源、バッテリー、ファン、USBポートの電力管理などを制御するチップです。SMCをリセットすると、電源関連の不具合が解消されることがあります。リセット方法はMacのモデル(Appleシリコン搭載機かIntel機かなど)で異なるため、必ずAppleの公式サポートページでご自身のモデルに合った正しい手順を確認してから実行してください。
- NVRAM/PRAMをリセットするNVRAM/PRAMは音量や画面解像度などの設定情報を記憶する領域で、ここの情報破損がUSBポートの認識に影響することがあります。Intel搭載のMacでは、電源を入れ直した直後に「option」「command」「P」「R」の4キーを同時に20秒ほど押し続けるとリセットできます。
マザーボード故障の可能性と修理に出す前の確認事項

これまで紹介した全ての対処法を試してもエラーが解消されない場合、PCの心臓部であるマザーボードが物理的に故障している可能性を考慮する必要があります。特に以下の症状がある場合は、その可能性が非常に高くなります。
- 何も接続していないのに、全てのUSBポートでエラーが出る。
- PC起動時に「USB over current status detected」といったメッセージが表示され、OSが起動する前に停止する。
- PC内部から焦げたような異臭がする。
修理に出す前に、上級者向けの最後の確認として以下の2点が試せます。
- BIOS/UEFIをリセット・アップデートするPCの最も基本的なハードウェア制御プログラムであるBIOS/UEFIの設定破損が原因の場合があります。PC起動時に特定のキー(Del、F2など)を押して設定画面に入り、「工場出荷時の設定に戻す(Load Default Settings)」を実行します。また、メーカーサイトに最新版があればアップデートも有効な場合があります。
- 内部の物理的な確認(自己責任で)PCケースを開けられる場合は、電源を完全に切りコンセントを抜いてから、内部を目視で確認します。マザーボード上のコンデンサの膨らみや液漏れ、焦げた跡がないか、脱落したネジなどが基板の裏側でショートを起こしていないかを確認します。
これらの最終確認でも改善しない場合、個人で対処できる範囲を超えています。さらなる故障を招く危険があるため、速やかに専門の修理業者に相談することをお勧めします。
総括:USBポートの電力サージについて
この記事のまとめです。
- 「USBポートの電力サージ」はPCの正常な保護機能である
- 原因は接続機器、ケーブル、PC本体と多岐にわたる
- まずは全USB機器を外しPCを再起動するのが基本である
- 問題の機器やポートを一つずつ切り分けて特定することが重要だ
- 何も接続せずエラーが出る場合は内部ショートの可能性が高い
- Windowsのトラブルシューティングツールは有効な手段の一つだ
- デバイスマネージャーでのUSBドライバ再インストールは試す価値がある
- 「USBのセレクティブサスペンド」無効化で改善する場合がある
- PCの完全放電は原因不明のハードウェア不具合に効果的だ
- デスクトップとノートPCでは放電手順が異なるため注意が必要である
- 消費電力の大きい機器にはセルフパワーUSBハブが最善の解決策だ
- バスパワーハブはPCの電力を分割するため電力不足を招きやすい
- Macでは「USBアクセサリが無効です」が同等のエラーにあたる
- Macの不具合はSMCリセットやNVRAMリセットで対処する
- 全ての対処法で解決しない場合はマザーボードの物理故障を疑うべきだ