「冷房を30度に設定したら、電気代は本当に安くなるの?」そんな疑問をお持ちではありませんか。
夏の電気代を少しでも抑えたいけれど、快適さも失いたくないですよね。
この記事では、電気代の専門家が、冷房30度の実際の電気代から、28度設定との料金比較、そして意外と知られていない「除湿」機能との賢い使い分けまで、科学的根拠に基づいて徹底解説します。
さらに、扇風機の効果的な併用方法やフィルター掃除の重要性、最新の政府補助金情報まで、明日からすぐに実践できるプロの節約術を網羅。この記事を読めば、あなたも無理なく賢く、夏の電気代を節約できるようになります。
- 冷房30度は28度より電気代が安いが快適性との両立が鍵
- 「再熱除湿」は冷房より電気代が高くなる可能性に注意
- 電気代は燃料費調整額と再エネ賦課金で大きく変動する
- 扇風機の併用やフィルター掃除で設定温度を上げても快適
冷房30度の電気代は本当に安い?設定温度と料金の真実
- 1時間あたりの電気代を徹底比較!28度との差は?
- 冷房より除湿が安い?機能の賢い使い分け術
- 最新エアコンの消費電力は?メーカー・畳数別比較
- 電気代の内訳を解説!燃料費調整額と再エネ賦課金とは
1時間あたりの電気代を徹底比較!28度との差は?

結論から言うと、エアコンの冷房設定を30度にするのは、28度や27度といった低い温度に設定するよりも電気代は安くなります。エアコンは、室外の気温と設定温度の差が小さいほど、消費する電力が少なくなるためです。外が35度の猛暑日に、室内を27度まで冷やすのと30度まで冷やすのでは、後者の方がエアコンにかかる負荷が格段に軽いのです。
資源エネルギー庁のデータによると、冷房の設定温度を1度上げるだけで、約13%の消費電力削減効果があるとされています。これは非常に大きな数字です。例えば、一般的な6畳から8畳向けのエアコンの冷房時の消費電力を525W(0.525kW)、電力料金の目安単価を1kWhあたり31円として計算してみましょう。
この場合、1時間あたりの電気代は約16.3円です。もし設定温度を1度上げて消費電力が13%削減されると、電気代は約14.2円となり、1時間で約2.1円の節約になります。1日に8時間使うとすれば約16.8円、1ヶ月(30日)では約504円もの差になります。
政府が推奨する夏の室内温度の目安は28度ですが、もし普段26度設定にしている方が28度にするだけで、月々1,000円以上の節約が見込める計算です。30度設定はさらに安くなりますが、熱中症のリスクも考慮し、無理のない範囲で「できるだけ高い温度」を目指すのが賢い選択と言えるでしょう。
設定温度の目安 | 1時間あたりの電気代(推定) | 1日(8時間)の電気代(推定) | 1ヶ月(30日)の電気代(推定) | 26度設定との月間差額 |
26℃ | 21.1円 | 168.8円 | 5,064円 | 0円 |
27℃ | 18.4円 | 147.2円 | 4,416円 | -648円 |
28℃ | 16.0円 | 128.0円 | 3,840円 | -1,224円 |
29℃ | 13.9円 | 111.2円 | 3,336円 | -1,728円 |
30℃ | 12.1円 | 96.8円 | 2,904円 | -2,160円 |
冷房より除湿が安い?機能の賢い使い分け術

「冷房よりも除湿(ドライ)の方が電気代が安い」という話をよく聞きますが、これは必ずしも正しくありません。実は、除湿機能には大きく分けて2つの方式があり、どちらの方式かによって電気代は大きく変わるため、注意が必要です。
一つ目は「弱冷房除湿」です。これは、弱い冷房運転をしながら湿度を取り除く方式で、部屋の温度も少し下がります。消費電力は通常の冷房運転よりも少ないため、電気代は安くなる傾向にあります。梅雨時など、気温はそれほど高くないけれど湿度が高くて不快な日に使うのが効果的です。
問題は二つ目の「再熱除湿」です。この方式は、まず空気を冷やして湿気を取り除き、そのあとで冷たくなった空気をエアコン内部で暖め直してから室内に送風します。室温を下げずに湿度だけを下げられるため、肌寒い日でも快適に使えるのが利点です。しかし、一度冷やした空気をわざわざ暖め直すという余分な工程があるため、多くの電力を消費します。結果として、通常の冷房運転よりも電気代が高くなってしまうのです。
ご自宅のエアコンがどちらの方式かを見分ける簡単な方法は、除湿運転中に室温が下がるかどうかです。室温が下がれば「弱冷房除湿」、室温が変わらないか少し暖かく感じるなら「再熱除湿」の可能性が高いです。真夏に「再熱除湿」を節約目的で使うと逆効果になるため、機能の特性を正しく理解し、状況に応じて賢く使い分けることが重要です。
運転モード | 仕組み | 室温への影響 | 電気代の目安 | おすすめの利用シーン |
冷房 | 室内の熱を奪い、冷たい空気を送る | 下がる | 中 | 気温が高く、とにかく涼しくしたい時 |
弱冷房除湿 | 弱い冷房で除湿する | 少し下がる | 安い | 気温は高くないが、湿度が高く蒸し暑い時 |
再熱除湿 | 空気を冷やして除湿後、暖め直して送風 | 変わらない | 高い | 梅雨の肌寒い日など、室温を下げずに除湿したい時 |
最新エアコンの消費電力は?メーカー・畳数別比較

エアコンの電気代を考える上で、設定温度や使い方と同じくらい重要なのが、エアコン自体の省エネ性能です。特に10年以上前の古いモデルを使い続けている場合、最新の省エネモデルに買い替えるだけで、電気代が劇的に安くなることがあります。
エアコンの省エネ性能を比較する際に注目すべき指標は、「期間消費電力量(kWh)」です。これは、特定の条件下で1年間にエアコンが消費する電力量の目安を示したもので、この数値が小さいほど省エネ性能が高いと言えます。
例えば、人気の主要メーカーである三菱電機やダイキンの最新モデル(8畳用)を見てみましょう。同じ8畳用でも、シリーズによって性能は異なり、期間消費電力量には差があります。ハイエンドモデルは初期費用が高いですが、年間の電気代を抑えられるため、長期間使えば元が取れる可能性があります。
一方で、基本的な性能を備えたスタンダードモデルでも、10年前のモデルと比較すれば格段に効率は向上しています。買い替えを検討する際は、本体価格だけでなく、この期間消費電力量をチェックし、年間の電気代まで含めたトータルコストで判断することが賢明です。
メーカー・シリーズ(8畳用モデル例) | 期間消費電力量(年間) | 年間電気代の目安(31円/kWhで計算) |
三菱電機 霧ヶ峰 Zシリーズ | 695 kWh | 約21,545円 |
三菱電機 霧ヶ峰 Rシリーズ | 815 kWh | 約25,265円 |
ダイキン うるさらX Rシリーズ | 717 kWh | 約22,227円 |
ダイキン Eシリーズ | 830 kWh | 約25,730円 |
電気代の内訳を解説!燃料費調整額と再エネ賦課金とは

毎月の電気代の明細を見て、「先月と同じくらいしか使っていないのに、なぜか料金が高い」と感じたことはありませんか?その原因は、私たちがコントロールできない2つの要素、「燃料費調整額」と「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」にあります。
「燃料費調整額」とは、発電に必要な液化天然ガス(LNG)や石炭、原油といった燃料の価格変動を電気料金に反映させるための仕組みです。燃料の輸入価格が、電力会社が設定した基準価格より高くなれば電気代に上乗せされ、安くなれば差し引かれます。近年、世界情勢の不安定化や円安の影響で燃料価格が高騰し、この調整額が電気代を押し上げる大きな要因となっています。以前は多くの電力会社でこの調整額に上限が設けられていましたが、現在はその上限が撤廃されているプランが多く、燃料価格が上がると青天井で電気代も高くなる可能性があります。
一方、「再エネ賦課金」は、太陽光や風力といった再生可能エネルギーを普及させるために、電気を使うすべての人から集められているお金です。電力会社が再生可能エネルギーを買い取る費用を、国民全体で分担する仕組みで、電気の使用量1kWhあたりに単価が決められています。この単価は毎年見直されており、2025年度(2025年5月分から適用)は1kWhあたり3.98円に決定しました。
例えば、月に400kWhの電気を使う家庭では、毎月約1,592円が再エネ賦課金として自動的に請求されることになります。これらの要素があるため、節電努力だけでは電気代の上昇を完全に抑えることは難しいのです。だからこそ、自分でコントロールできる「使用量(kWh)」を1kWhでも減らすことが、これまで以上に重要になっています。
冷房30度でも快適!プロが教える電気代節約術
- 扇風機やサーキュレーターの効果的な併用方法
- フィルター掃除と室外機周りの見直しで効率アップ
- 窓からの熱を遮断!カーテンやすだれの活用術
- 政府の補助金はいつまで?最新の支援策をチェック
扇風機やサーキュレーターの効果的な併用方法

エアコンの設定温度を30度近くまで上げても快適に過ごすための最強のパートナーが、扇風機やサーキュレーターです。これらの機器は、エアコンに比べて消費電力が圧倒的に少ないのが特徴です。一般的な扇風機は、最も弱い運転で1時間あたり1円もかからないことが多く、エアコン(約16円)の数十分の一のコストで済みます。
重要なのは、その使い方です。扇風機やサーキュレーターは部屋の温度自体を下げるわけではありません。風を体に当てることで、汗の蒸発を促し、体感温度を下げてくれるのです。風が肌に触れると、実際の室温よりも2〜3度涼しく感じると言われています。これにより、エアコンの設定温度を28度や29度にしても、体感的には26度程度の快適さを得ることが可能になります。
さらに効果的なのが、空気の循環を促す使い方です。冷たい空気は重く、部屋の下の方に溜まりがちです。そこで、サーキュレーターをエアコンの対角線上に置き、天井に向けて風を送るようにします。すると、下に溜まった冷気が上に送られ、天井や壁を伝って部屋全体に行き渡り、室内の温度ムラが解消されます。これにより、エアコンが「部屋がまだ冷えていない」と勘違いして余計に稼働するのを防ぎ、効率を大幅にアップさせることができるのです。エアコンと扇風機・サーキュレーターの併用は、快適性と節電を両立させるための最も基本的なテクニックと言えます。
フィルター掃除と室外機周りの見直しで効率アップ

お金をかけずに、すぐにできて効果が高い節約術の筆頭が、エアコンのフィルター掃除です。エアコンは室内の空気を吸い込み、熱交換器で冷やしてから吹き出す仕組みですが、その際、空気中のホコリやゴミがフィルターに付着します。フィルターが目詰まりすると、空気の通り道が塞がれ、エアコンは効率的に空気を吸い込めなくなります。
これは、人間がマスクをしたまま全力疾走するようなもので、エアコンは設定温度まで部屋を冷やすために、より多くのパワーを使わなければならず、無駄な電力を消費してしまいます。資源エネルギー庁のデータによれば、フィルターを月に1〜2回清掃するだけで、年間で約32kWh、電気代にして約990円もの節約につながるとされています。掃除方法は簡単で、フィルターを取り外して掃除機でホコリを吸い取るか、水洗いして陰干しするだけです。このわずかな手間で、冷房効率が改善し、電気代の節約だけでなく、エアコンから出る空気も清潔に保てます。
同様に、屋外に設置されている「室外機」の周辺環境も重要です。室外機は、部屋の中から集めた熱を外に放出する役割を担っています。そのため、室外機の吹き出し口の前に物を置いたり、雑草が生い茂っていたりすると、熱の放出が妨げられ、冷房効率が著しく低下します。また、直射日光が当たる場所に設置されていると、室外機自体が高温になり、熱交換の効率が悪くなります。室外機の周りは常に整理整頓し、風通しを良くしておくこと。そして、すだれなどで日陰を作ってあげるだけでも、消費電力を抑える効果が期待できます。
窓からの熱を遮断!カーテンやすだれの活用術

夏の室内が暑くなる最大の原因の一つが、窓から差し込む日差しです。エアコンでいくら部屋を冷やしても、窓から強力な太陽の熱が侵入し続ければ、それはまるで穴の空いたバケツに水を注ぐようなもの。エアコンは常にフルパワーで稼働し続け、電気代はかさむ一方です。そこで重要になるのが、窓際の断熱対策です。
最も手軽で効果的なのは、遮光・遮熱性能のあるカーテンやブラインドを活用することです。日中はレースのカーテンだけでなく、厚手のカーテンも閉めておくことで、日射を大幅にカットできます。特に、日差しが強い南向きや西向きの窓は重点的に対策しましょう。外出する際もカーテンを閉めておけば、帰宅時の室内の温度上昇を抑えられ、エアコンの立ち上がりの負担を軽減できます。
日本の昔ながらの知恵である「すだれ」や「よしず」も非常に有効です。これらを窓の外側に設置する利点は、日差しが窓ガラスに到達する前に遮ることができる点にあります。カーテンが室内で熱を受け止めるのに対し、すだれやよしずは屋外で熱を遮断するため、より高い断熱効果が期待できます。ホームセンターなどで手軽に購入でき、設置も比較的簡単です。エアコンの設定温度を1度上げるためには、まず部屋の温度を上げる原因を断つことが先決です。窓からの熱の侵入を防ぐことは、エアコンの負荷を減らし、電気代を節約するための根本的な対策と言えるでしょう。
政府の補助金はいつまで?最新の支援策をチェック
近年の電気料金の高騰を受け、政府は家庭や企業の負担を軽減するための支援策を実施しています。これらの補助金制度は期間限定の措置ですが、内容を知っておくことで家計の助けになります。
2024年5月使用分(6月請求分)で一度終了した国の電気料金負担軽減策ですが、2025年8月分から10月分までの3ヶ月間、再び実施されることが決定しています。この支援策は、私たちが電力会社に申し込む必要はなく、毎月の電気料金から自動的に割引される仕組みです。
具体的な割引単価は、家庭などの低圧契約の場合、2025年8月分と10月分が1kWhあたり2.0円、そして電力需要が特に高まる9月分は1kWhあたり2.4円となっています。例えば、月に400kWhの電気を使用する標準的な家庭では、8月と10月には800円、9月には960円が電気代から割り引かれる計算になります。
ただし、この支援策はあくまで一時的なものであることを理解しておく必要があります。補助金が終了すれば、再び電気料金の負担は重くなります。したがって、この支援が行われている期間を、単に「電気代が安くなって助かる」と捉えるだけでなく、家計に生まれた余裕を省エネ性能の高い家電への買い替え資金に充てるなど、将来の電気代高騰に備えるための「準備期間」と考えることが、長期的な視点で見ると非常に重要です。
総括:冷房30度の電気代は安いが、快適な節約には工夫が不可欠
この記事のまとめです。
- 冷房の設定温度を30度にすることは、28度やそれ以下の設定に比べて電気代を安くする
- 冷房の設定温度を1度上げると、消費電力は約13%削減されるというデータがある
- 政府は夏の室内温度の目安として28度を推奨している
- 除湿機能には「弱冷房除湿」と「再熱除湿」の2種類が存在する
- 「弱冷房除湿」は冷房より消費電力が少なく、電気代が安い傾向にある
- 「再熱除湿」は室温を下げずに除湿するが、冷房より電気代が高くなる
- 最新の省エネエアコンは、10年以上前の古い機種に比べて格段に電力効率が良い
- エアコンの性能比較には「期間消費電力量(kWh)」という年間消費量の目安が有効である
- 電気料金には、使用量に応じた料金の他に「燃料費調整額」が含まれる
- 燃料費調整額は、燃料の輸入価格に応じて毎月変動し、電気代を左右する
- 電気料金には「再生可能エネルギー発電促進賦課金」も含まれる
- 2025年度の再エネ賦課金単価は1kWhあたり3.98円である
- 扇風機やサーキュレーターの併用は、体感温度を下げ、設定温度を上げても快適に過ごすのに有効である
- エアコンのフィルターを月に1〜2回掃除すると、年間で約1,000円の節約効果が見込める
- 室外機の周りに物を置かず、日陰を作ることで冷房効率が向上する