夏の電気代を見て「どうしてこんなに高いの?」と驚いた経験はありませんか。
特にエアコンは消費電力が高く、家計を圧迫しがちです。政府が推奨する「28度設定」を実践しているのに、思ったほど電気代が安くならないと感じる方も多いでしょう。
この記事では、エアコンを28度で1ヶ月使った場合の電気代を、最新の料金体系に基づいて徹底的にシミュレーションします。
さらに、電気代が決まる4つの要素や、誤解されがちな28度設定の真実、そして「自動運転」や電力会社のプラン見直しといった、明日から実践できる賢い節約術まで、専門家が分かりやすく解説します。
- エアコン28度の1ヶ月の電気代は約3,500円から5,500円が目安
- 電気代は「基本料金」「電力量料金」「燃料費調整額」「再エネ賦課金」で決まる
- 環境省が推奨するのは「設定温度」ではなく「室温」28度
- 自動運転の活用や電力会社のプラン見直しが大きな節約につながる
エアコンを28度で使った1ヶ月の電気代を徹底シミュレーション
- 結論:エアコン28度の1ヶ月の電気代は約3,500円~5,500円
- 電気代が決まる4つの要素とは?料金明細の内訳を解説
- 最新エアコンの消費電力と電気料金単価で計算の準備
- 表で見る!エアコン28度、1ヶ月の電気代シミュレーション
結論:エアコン28度の1ヶ月の電気代は約3,500円~5,500円

夏の暮らしに欠かせないエアコンですが、気になるのはその電気代です。早速結論からお伝えすると、エアコンの設定温度を28度にして1ヶ月間使用した場合の電気代は、おおよそ3,500円から5,500円が目安となります。この金額は、一般的な10畳用の最新エアコンを、1日に8時間、30日間使用したという特定の条件下でのシミュレーション結果です。
もちろん、この金額はあくまで一つのモデルケースです。実際の電気代は、お使いのエアコンの機種や古さ、お部屋の広さや日当たりの良さ、建物の断熱性能、お住まいの地域、そして契約している電力会社の料金プランなど、非常に多くの要因によって変動します。
そのため、「我が家はいくら?」を正確に知るには、電気代の仕組みを理解した上で、ご自身の状況に合わせて考えることが重要です。この後、具体的な計算方法を詳しく解説していきますので、ご自宅の電気代を予測する際の参考にしてください。
電気代が決まる4つの要素とは?料金明細の内訳を解説
毎月届く電気料金の明細書を見て、ただ合計金額を確認するだけで終わっていませんか。実は、電気代は複数の項目が組み合わさってできており、その内訳を知ることが節約への第一歩となります。電気代は、主に以下の4つの要素で構成されています。
1つ目は「基本料金」です。これは電力使用量にかかわらず毎月固定でかかる料金で、契約しているアンペア(A)数によって金額が決まります。
2つ目は「電力量料金」。これが実際に使用した電気の量(kWh:キロワットアワー)に応じて変動する料金です。多くの電力会社では、使用量が増えるほど1kWhあたりの単価が高くなる三段階料金制度を採用しています。
3つ目は「燃料費調整額」。火力発電で使う原油や液化天然ガス(LNG)などの燃料価格の変動を電気代に反映させるための調整額です。燃料価格が安ければマイナス(割引)に、高ければプラス(割増)になります。
4つ目は「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」です。太陽光発電などを普及させるため、電気を使う全国民が等しく負担する料金で、国が毎年単価を決定します。これら4つの合計が、私たちの支払う電気代となるのです。
最新エアコンの消費電力と電気料金単価で計算の準備
具体的な電気代をシミュレーションするために、まずは計算の前提となる数値を設定しましょう。ここでは、公平で分かりやすい基準を用いることが重要です。
まず、エアコンのモデルとして、比較的新しい省エネ性能の高い機種を想定します。今回は、三菱電機の人気シリーズ「霧ヶ峰 Zシリーズ」の10畳用モデル(MSZ-ZW2825)を例にします。このモデルの冷房時の定格消費電力は580Wです。電気代の計算では、このワット(W)をキロワット(kW)に変換する必要があるため、1000で割って0.58kWとします。
次に、使用状況を定義します。夏の平均的な使い方として、「1日に8時間、月に30日間」使用すると仮定します。これにより、1ヶ月の総使用時間は8時間×30日=240時間となります。
最後に、電気料金の単価です。今回は、最も一般的なプランの一つである東京電力エナジーパートナーの「従量電灯B」プラン(30A契約)を基準にします。基本料金は935.25円。電力量料金は三段階制で、最初の120kWhまでが29.80円、300kWhまでが36.40円、それ以上が40.49円です。これに、最新の燃料費調整額と、2024年度の再エネ賦課金単価である3.49円/kWhを加えて計算します。
表で見る!エアコン28度、1ヶ月の電気代シミュレーション
それでは、前項で準備した数値を使って、実際に1ヶ月の電気代を計算してみましょう。まず、1ヶ月の総消費電力量を算出します。消費電力0.58kWのエアコンを240時間使うので、0.58kW×240時間=139.2kWhとなります。この消費電力量を基に、各料金項目を計算し、合計金額を求めます。計算の内訳を分かりやすく表にまとめました。
料金項目 | 計算式 | 金額(円) |
基本料金 | 30A契約 | 935.25 |
電力量料金 | ||
└ 第1段階料金 | 120kWh×29.80円 | 3,576.00 |
└ 第2段階料金 | (139.2−120)kWh×36.40円 | 700.80 |
燃料費調整額 | 139.2kWh×(−7.65円) | -1,064.88 |
再エネ賦課金 | 139.2kWh×3.49円 | 485.80 |
合計金額 | 上記の合計 | 約4,633円 |
このように、各項目を一つずつ計算していくと、合計金額は約4,633円となりました。燃料費調整額がマイナス(割引)になっている点が、近年の電気代を少し押し下げています。この表を見ると、電気代がどのように構成されているかが一目瞭然です。ご自身の電気使用量や契約プランの単価を当てはめれば、より正確な電気代を予測することができます。
エアコン28度設定の真実と賢い節約術で1ヶ月の電気代を安くする
- 誤解だった?環境省が推奨する「室温28度」の本当の意味
- 設定温度1℃の差は大きい!政府公認の節約効果とは
- 「自動運転」が最強?エアコンの賢い使い方3選
- 根本的な見直しを!電力会社のプラン比較が最大の節約術
誤解だった?環境省が推奨する「室温28度」の本当の意味

夏の節電の合言葉として広く知られている「28度設定」。しかし、この数字には多くの人が誤解している重要なポイントがあります。実は、環境省がクールビズの一環として推奨しているのは、エアコンの「設定温度」を28度にすることではなく、部屋の「室温」を28度に保つことなのです。
この28度という数値は、もともと「事務所衛生基準規則」などで定められた、事業者が維持するよう努めるべき室温の範囲(18度以上28度以下)に基づいています。つまり、快適性と健康を維持しつつ、過度な冷房を避けるための目安として示されたものです。
エアコンの設定温度を28度にしても、日差しが強い部屋や断熱性の低い建物では、室温が30度を超えてしまうこともあります。それでは快適とは言えず、熱中症のリスクも高まります。大切なのは、リモコンの数字に固執することではなく、室温計などを活用して実際の室温を把握し、無理のない範囲で快適な環境を保つことです。28度はあくまで目安であり、湿度や体調に合わせて柔軟に調整することが賢明です。
設定温度1℃の差は大きい!政府公認の節約効果とは

「たった1度の違いで、そんなに変わるものだろうか」と疑問に思うかもしれません。しかし、エアコンの設定温度を1度見直すだけで、電気代に明確な差が生まれます。これは感覚的な話ではなく、政府のデータに基づいた事実です。
経済産業省 資源エネルギー庁の発表によると、外気温が31度の時に、冷房の設定温度を27度から28度へ1度上げるだけで、年間で約940円の節約効果があるとされています。これは、室内と室外の温度差が小さくなることで、エアコンの心臓部であるコンプレッサーの負担が減り、消費電力が抑えられるためです。
また、もう一つ見逃せないのがフィルターの掃除です。フィルターがホコリで目詰まりしていると、空気の通りが悪くなり、部屋を冷やすためにより多くのエネルギーが必要になります。同庁のデータでは、フィルターを清掃するだけで年間約990円もの節約につながると試算されています。設定温度の見直しと定期的なフィルター掃除。この2つの簡単なアクションを組み合わせるだけで、年間で約2,000円もの節約が期待できるのです。
「自動運転」が最強?エアコンの賢い使い方3選

エアコンの電気代を節約するためには、設定温度以外にも効果的な使い方がいくつかあります。特に、多くの方が意外と活用しきれていないのが「自動運転」モードです。
1つ目は、その「自動運転」を積極的に使うことです。自動運転モードは、起動時に一気に部屋を冷やし、設定温度に達した後は、センサーが室温を監視しながら最も効率的な風量や運転方法を自動で選択してくれます。手動で風量を「弱」に固定するよりも、室温を効率的に維持し、結果的に無駄な電力消費を抑えることができるのです。
2つ目は、扇風機やサーキュレーターとの併用です。冷たい空気は下に溜まる性質があるため、扇風機などで空気を循環させることで、部屋全体の温度ムラをなくし、効率よく快適な空間を作れます。また、風が体に当たることで体感温度が下がるため、エアコンの設定温度を1~2度上げても快適に過ごせます。
3つ目は、窓からの日差しを遮ることです。夏場、室温が上がる最大の原因は窓から入る直射日光です。遮光カーテンやブラインド、すだれなどを活用して日差しをカットするだけで、室内の温度上昇を大幅に抑えられ、エアコンの負荷を大きく軽減することができます。
根本的な見直しを!電力会社のプラン比較が最大の節約術

日々の使い方を工夫することも大切ですが、電気代を根本から見直す最も効果的な方法は、契約している電力会社の料金プランを比較検討することです。2016年の電力小売全面自由化により、私たちは地域の大手電力会社だけでなく、様々な「新電力」と呼ばれる会社から電気を買えるようになりました。
各社が提供するプランは多種多様で、基本料金が安いプラン、特定の時間帯の電力量料金が割引になるプラン、ガスとのセットで割引が適用されるプランなど、ライフスタイルに合わせて選ぶことができます。
特に注意したいのが「燃料費調整額」の上限の有無です。東京電力の「従量電灯B」のような従来のプランには、燃料価格が高騰した際の調整額に上限が設けられていることが多いですが、多くの新電力プランにはこの上限がありません。燃料価格が安定している時期は新電力の方が割安になる傾向がありますが、高騰時には逆に電気代が大幅に上がるリスクも伴います。ご自身の毎月の電気使用量やリスク許容度を考えながら、比較サイトなどを活用して最適なプランを探すことが、最大の節約につながる可能性があります。
総括:エアコン28度の1ヶ月の電気代を理解し、賢い節約で快適な夏を
この記事のまとめです。
- エアコン28度設定での1ヶ月の電気代は、最新機種・10畳用・1日8時間使用のモデルケースで約4,633円である。
- 実際の電気代は、エアコンの性能、部屋の環境、電力契約など多くの要因で変動する。
- 電気料金は「基本料金」「電力量料金」「燃料費調整額」「再エネ賦課金」の4要素で構成される。
- 基本料金は契約アンペア数で決まる固定費である。
- 電力量料金は使用量に応じて単価が上がる三段階制が一般的である。
- 燃料費調整額は、世界的な燃料価格の変動を電気代に反映させるものである。
- 再エネ賦課金は、再生可能エネルギー普及のために全国民が負担するものである。
- 環境省が推奨する「28度」は、設定温度ではなく室温の目安である。
- この目安は、事務所衛生基準規則などの法律に基づいている。
- 設定温度を1度上げると、年間で約940円の節約効果が期待できる。
- フィルターを定期的に清掃するだけで、年間約990円の節約が見込める。
- エアコンの「自動運転」モードは、最も効率的に室温を維持し節電につながる。
- 扇風機やサーキュレーターを併用し、空気を循環させると体感温度が下がり効果的である。
- 遮光カーテンやすだれで窓からの直射日光を防ぐことは、エアコンの負荷軽減に非常に有効である。
- 2016年の電力自由化以降、消費者は電力会社を自由に選ぶことができ、プラン見直しが最大の節約術になり得る。