「蓄熱暖房機を使い始めてから、冬の電気代が明らかに高くなった気がする……」と不安になっていませんか。
特に北海道や東北など寒冷地のオール電化住宅では、蓄熱暖房機や電気温水器の電気代が家計を圧迫し、冬場にひと月10万円前後、場合によっては10万円超の請求になった事例も報告されています。
この記事では、日本の一般家庭向け電気料金について、最新の公表データや電力会社の料金表をもとに、「なぜ蓄熱暖房機の電気代が高くなりやすいのか」を仕組みから整理します。
さらに、深夜電力プランの変化、一般家庭との電気代の差、高くなりやすい家の条件、そして蓄熱量・設定温度の見直しや料金プランの再チェック、エアコン併用・機器入れ替え・補助金活用まで、具体的な対策を順番に解説します。
この記事で扱う電気料金や制度は、地域・電力会社・契約プランによって異なります。ここでは、全国家庭電気製品公正取引協議会が公表している「1kWhあたり31円(税込)」という目安単価や、東京電力エナジーパートナーの標準的な料金メニューを例に説明していきます。
- 蓄熱暖房機の電気代が「高すぎる」と言われる主な理由が分かる
- 深夜電力プランの値上がりや制度変更が与える影響を理解できる
- 一般的な家庭の電気代と、蓄熱暖房機を使うオール電化住宅の差をイメージできる
- 具体的な節約方法と、蓄熱暖房機から他の暖房方式へ切り替える判断軸が分かる
蓄熱暖房機の電気代が高すぎる理由
- 蓄熱暖房機の仕組みと消費電力
- 深夜電力プランと値上がり
- 一般家庭の電気代との比較
- 高すぎる電気代になりやすい家
蓄熱暖房機の仕組みと消費電力

蓄熱暖房機(夜間蓄熱式暖房器)は、内部のレンガ状の蓄熱材を夜間に電気ヒーターで高温まで加熱し、その熱を少しずつ放出して部屋を暖める機器です。東京電力エナジーパートナーなども、夜間蓄熱式機器としてエコキュートや蓄熱暖房機を紹介しています。
ポイントは、「電気ヒーターで直接熱をつくるタイプ」だという点です。電気ヒーターは、1kWhの電気から理論上1kWh分の熱しか取り出せません。一方、エアコンやエコキュートのようなヒートポンプ機器は、空気中の熱をくみ上げて利用する仕組みのため、同じ1kWhの電力から約3倍前後の熱を取り出せる場合があります。資源エネルギー庁が紹介する試算では、ヒートポンプ式エアコンは蓄熱式床暖房に比べて暖房代を約72%削減できるとされています。
つまり、蓄熱暖房機は「快適だが、効率は電気ヒーターと同程度」であり、電気料金単価が高くなるほど、ヒートポンプ暖房とのランニングコストの差が大きくなっていきます。
さらに、家庭用蓄熱暖房機は3kW〜5kWクラスの製品が一般的です。メーカーの仕様表や販売店の説明でも、3kW・4kW・5kW・6kWといった容量が住宅用としてラインナップされており、1台あたりの消費電力がかなり大きいことが分かります。
ここで、あくまでシンプルな例として「3kWと4kWの蓄熱暖房機を、毎晩8時間フルで蓄熱する」ケースを考え、電気代の試算に広く使われている目安単価31円/kWh(税込)をあてはめてみます。
- 3kW × 8時間 × 30日
= 720kWh → およそ 22,000円前後
- 4kW × 8時間 × 30日
= 960kWh → およそ 30,000円前後
燃料費調整額や再エネ賦課金、基本料金などは含まない単純計算ですが、「1台だけでも月2〜3万円規模」になり得ることがイメージできると思います。
実際の請求額は、
- お住まいの地域・電力会社の単価
- 深夜電力プランの有無と、夜間・昼間の単価差
- 蓄熱時間(6時間・8時間・10時間など)と蓄熱量の設定
- 住宅の断熱性能や間取り、家族の在宅時間
といった条件で大きく変わります。
とはいえ、「数kWクラスの電気ヒーターを毎晩長時間回している」という構造上、1kWhあたり30〜40円台という現在の日本の電気料金水準では、蓄熱暖房機が電気代を押し上げやすいことは避けられません。
東京電力エナジーパートナーのスタンダードS(旧従量電灯B/C)では、2025年時点で電力量料金が第1段階29.80円、第2段階36.40円、第3段階40.49円(いずれも税込)の三段階制になっており、使用量が増えるほど単価も上がる仕組みです。
蓄熱暖房機を使うと使用量が一気に増えるため、第3段階の高い単価が適用される時間帯が長くなりやすい点も、「高すぎる電気代」につながる一因です。
深夜電力プランと値上がり

「蓄熱暖房機は深夜電力で安く使える」と聞いて導入した方も多いと思います。
深夜電力とは、電力会社が指定する夜間(例:23時〜翌7時)だけ、他の時間帯より割安な単価で電気を使える料金メニューの総称です。エコキュートや電気温水器、蓄熱暖房機、蓄熱床暖房など「夜間に熱をためて昼に使う機器」を前提に普及してきました。
ところが、2020年代に入ってからの燃料価格高騰や電気料金制度の見直しにより、
- 時間帯別電灯・深夜電力プランの新規受付を停止する電力会社が増えた
- 従来型の「深夜は大幅に安い」プランが縮小し、割引率が小さくなった
- 燃料費調整額や再エネ賦課金の上昇で、深夜単価そのものも上がっている
といった状況になっています。
例えば、ある電力会社のプランでは、通常の第2段階単価が36円/kWh前後に対し、深夜時間帯は27〜28円/kWh程度という例があります。確かに深夜の方が安いものの、以前のように「半額近い」というほどの差ではなく、昼間との単価差は縮小しています。
このため、
- 「深夜電力だから大丈夫」と思って同じ使い方を続けていたら、いつの間にか昼間とそれほど単価が変わらなくなっていた
- 給湯器や暖房機器をリフォームした際に料金メニューが変わり、蓄熱暖房機に適用される単価が以前より高くなっていた
- かつてのオール電化向け割安プランが終了し、従量電灯+時間帯別プランなどの組み合わせに変わった
といったケースで、「昔と同じつもりで使っているのに電気代だけが急に高くなった」と感じるご家庭が増えています。
さらに、東京電力のようにオール電化向けの時間帯別プラン(スマートライフSなど)は、夜間蓄熱式機器を一定容量以上使用することが申込条件になっている場合もあります。
契約メニューを変えたり、蓄熱暖房機を撤去したりすると、深夜割引の条件から外れ、標準的な従量料金になる可能性もあるため、機器の入れ替えと料金メニューはセットで確認する必要があります。
結論として、「蓄熱暖房機+深夜電力=圧倒的にお得」という時代ではなくなりつつあり、深夜割引が小さくなった現状では、「どのプランで、どの時間帯に、どのくらい電気を使っているか」を冷静に見直すことが重要です。
一般家庭の電気代との比較

では、「うちの蓄熱暖房機の電気代は、一般家庭と比べてどれくらい高いのか」をイメージしてみましょう。
資源エネルギー庁の解説では、オール電化ではない一般家庭の平均的な電力使用量は、月およそ400kWh程度と紹介されています。
先ほどの目安単価31円/kWhを用いると、400kWh × 31円 = 約12,400円となり、基本料金や燃料費調整額などを含めると、電気代は月1万円台前半〜中盤に収まるケースが多いと考えられます。実際に、家計調査をもとにした民間の分析でも、単身世帯で5,000〜7,000円前後、2人以上世帯で1〜1万5,000円程度というデータが示されています。
一方、オール電化が普及し始めた1990年代頃、寒冷地のオール電化住宅では、冬季の月間電力使用量が3,000〜5,000kWhに達し、電気代が10万円を超える事例があると報告されています。
資源エネルギー庁の試算では、こうした世帯では消費電力量の約7割が蓄熱暖房機による暖房、約2割が電気温水器による給湯で占められており、「暖房と給湯だけで電気代のほとんどを使っている」構図が確認されています。
ネット上の相談や工務店のブログでも、
- 北国のオール電化で、蓄熱暖房機+パネルヒーターを併用すると月8万円前後になる
- 暖房が蓄熱暖房機、給湯が電気温水器の家庭で、冬場の電気代が10万円近くになった
といった声が多数見られます。これらはあくまで個別の事例ですが、「一定の条件下では、桁違いの電気代になり得る」ことを示す参考になります。
もちろん、すべての蓄熱暖房機ユーザーがそこまで極端な金額になるわけではありません。
しかし、
- 一般的な家庭の電気代が月1万円台前後
- 古い蓄熱暖房機と電気温水器を中心としたオール電化住宅では、寒冷地で3万〜5万円、条件によっては10万円超
という「オーダーの違う電気代」になり得ることを知っておくことは、対策を考えるうえで非常に重要です。
高すぎる電気代になりやすい家

同じ蓄熱暖房機を使っていても、「そこまで高くない家」と「高すぎて耐えられない家」があります。その差を生む要因として、主に次の4つが挙げられます。
1つ目は、居住地域と気候です。
北海道や東北などの寒冷地では、冬の平均気温が低く、暖房期間も長いため、蓄熱暖房機の稼働時間が延びがちです。資源エネルギー庁の資料でも、これらの地域の家庭では、エネルギー消費の中で暖房と給湯の比率が非常に大きいことが示されています。
最低気温が氷点下になる日が多い地域では、「蓄熱量を減らすとすぐ寒くなる」ために設定を下げにくく、結果的に高い蓄熱量・長時間運転になりやすい傾向があります。
2つ目は、住宅の断熱性能と間取りです。
高気密・高断熱住宅であれば、一度あたためた熱が逃げにくく、蓄熱量を控えめにしても快適な室温を保ちやすくなります。逆に、断熱が不十分な住宅や、吹き抜け・大開口窓の多い大空間では、蓄えた熱がどんどん逃げてしまうため、「最大蓄熱」にしないと寒く感じてしまい、そのぶん電気代がかさんでしまいます。
窓の性能(ペアガラスか、樹脂サッシか)、玄関の断熱ドアの有無、床下・天井の断熱材の厚さなど、建物側の性能も電気代に直結します。
3つ目は、家族のライフスタイルです。
共働きで日中ほとんど家にいない家庭の場合、昼間にずっと熱を放出し続ける蓄熱暖房機はどうしても「もったいない」時間帯が生まれます。一方で、高齢の家族や小さな子ども、在宅ワークなどで昼間も家にいる時間が長い家庭では、24時間ふんわり暖かい蓄熱暖房機のメリットが活かしやすくなります。
「主に夜しか家にいない」「寝るときだけ暖かければよい」というライフスタイルとは、蓄熱暖房機の性格があまり合わないことも押さえておきたいポイントです。
4つ目は、他の暖房機器との組み合わせです。
蓄熱暖房機に加えて、各部屋のパネルヒーターやオイルヒーターを長時間同時に使っていると、電気ヒーター系の暖房が二重・三重に重なり、消費電力量は一気に跳ね上がります。実際に、蓄熱暖房機+パネルヒーター併用で月8万円前後の電気代になった事例も報告されています。
これらの条件がいくつも重なっている家ほど、「蓄熱暖房機の電気代が高すぎる」と感じやすい状態になっていると考えられます。
蓄熱暖房機の電気代を抑える方法
- 蓄熱量と設定温度の見直し
- 電気料金プランの再チェック
- エアコン併用など暖房機の選び方
- 蓄熱暖房機からの切り替え判断
- 総括:蓄熱暖房機の電気代が高すぎると感じたときの正しい向き合い方
蓄熱量と設定温度の見直し

電気代が高すぎると感じたとき、最初に見直したいのが「蓄熱量」と「設定温度」です。
電力比較サイトの解説では、蓄熱暖房機の節約ポイントとして、次のような使い方が紹介されています。
- 最適な蓄熱量を設定し、必要以上にため込まない
- 時刻設定(タイマー)を定期的に確認する
- ファンは必要なときだけ回す
- 数日以上留守にする場合は、蓄熱やファンを止める
- シーズンオフには電源プラグを抜き、ブレーカーも落とす
多くの機種では、蓄熱量を0〜100%や1〜10段階といった形で調整できます。「とりあえず最大」にしていると、毎晩フルパワーで蓄熱することになり、電気代は確実に増えます。
先ほどの3kW機・蓄熱8時間を100%と考えると、
- 蓄熱量を70%に下げる → 蓄熱時の消費電力量も単純計算で約3割減
- 4kW機で同じく70% → 4kW × 8時間 × 0.7 ≒ 22.4kWh/日
というイメージになります。実際には、外気温や住宅の断熱性能、放熱時間などによって変わるため「3割安くなる」とは言い切れませんが、「最大蓄熱が本当に必要か」を見直すだけでも、かなりの削減効果が期待できます。
また、設定温度が高すぎると、その温度を保つために蓄熱量やファン運転時間が増えます。住宅会社や工務店のブログでも、蓄熱時間を短縮したり、使用温度を1〜2段階下げることで消費電力を抑えられると解説されています。
おすすめは、「1〜2段階ずつ、数日様子を見ながら下げていく」方法です。急に大きく下げると、朝の冷え込みがつらくなったり、家族の体調に影響したり、結露やカビのリスクが高まることがあります。
室温計を1つ用意し、「朝起きたとき」「日中」「就寝前」の室温と体感を確認しながら、無理のない範囲で徐々に蓄熱量と設定温度を調整していきましょう。
あわせて、
- 就寝時・外出時は扉を閉めて暖房ゾーンを絞る
- 厚手のカーテンや内窓で窓からの熱損失を減らす
- サーキュレーターなどで天井付近の暖気を足元に戻す
といった「建物側・住み方側の工夫」を組み合わせると、同じ蓄熱量でも体感温度を上げやすくなり、さらなる節電につながります。
電気料金プランの再チェック

次に重要なのが、「今の電気料金プランが蓄熱暖房機に合っているかどうか」の確認です。
時間帯別・深夜電力プランには、主に次のような特徴があります。
- 日中は従量電灯や標準プランの単価、夜間だけ割安な単価を適用する
- エコキュートや蓄熱暖房機など、夜間蓄熱機器の使用を前提に設計されている
- 深夜時間帯(例:23時〜7時)のみ、特別単価が適用される
しかし近年は、
- 時間帯別電灯の新規受付を停止している電力会社が多い
- 従来プランから新プランへの切り替えで深夜割引が縮小している
- 燃料費調整額や再エネ賦課金の増加で、深夜単価も含めて全体が上昇している
という状況になっています。
また、エコキュートや給湯器の交換時には、国や自治体の補助金を利用するケースが増えています。給湯省エネ2025事業では、高効率給湯器の導入に合わせて電気蓄熱暖房機や電気温水器を撤去する場合、1台あたり8万円(上限2台)の「撤去加算」が用意されていますが、工事の開始日や申請方法など、細かな条件があります。
このような補助金を使ったリフォームの際に電気料金メニューが変更されることもあるため、「いつの間にか蓄熱暖房機に深夜単価が適用されなくなっていた」という事態も起こり得ます。
具体的には、次の点を一度確認しておきましょう。
- 現在の契約メニュー名(例:従量電灯B、スタンダードS、スマートライフS など)
- 深夜時間帯の区間(例:23時〜7時)と、その単価
- 蓄熱暖房機がどの系統・メーターに接続されているか
- オール電化向けの割安プランか、一般プラン+時間帯別プランの組み合わせか
検針票や電力会社のマイページで確認できなければ、コールセンターに「蓄熱暖房機に適用されている単価を教えてほしい」と問い合わせるのがおすすめです。そのうえで、電力比較サイトなどで他社プランや別の時間帯別料金と比較し、「今の使い方に合った料金プランか」を数年に一度は見直してみてください。
なお、電気料金は「基本料金+電力量料金+再エネ賦課金+燃料費調整額」がセットになっており、単価だけに目を向けると判断を誤ることがあります。目安単価31円/kWhはあくまで「電力量料金の目安」であり、実際の請求金額はこれに各種調整額が上乗せされることを忘れないようにしましょう。
エアコン併用など暖房機の選び方

「電気代が高いからといって、蓄熱暖房機をすぐに撤去するべきなのか?」というと、必ずしもそうとは限りません。
資源エネルギー庁の解説でも、蓄熱暖房機を使い続ける場合の工夫として、「エアコンと併用し、蓄熱量を減らす」といった運用例が紹介されています。
ポイントは、「24時間のうち、どの時間帯をどの暖房機器でまかなうか」を設計し直すことです。
例えば、次のような組み合わせが考えられます。
- 夜〜朝の冷え込みが特に厳しい時間帯だけ蓄熱暖房機を主体にし、日中はエアコン中心に切り替える
- 日中は不在が多い家庭では、蓄熱量を思い切って減らし、在宅時のみエアコンで素早く暖房する
- 個室など短時間だけ暖めたい部屋は、蓄熱暖房機ではなく高効率エアコンや他の暖房機器でカバーする
ヒートポンプ式エアコンは、同じ1kWhの電気から2〜3倍以上の熱を取り出せるため、適切な機種を選べば暖房効率は蓄熱暖房機より大きくなります。資源エネルギー庁の試算では、蓄熱式床暖房に比べて、ヒートポンプエアコンは暖房代を約72%削減できるとされています。
ただし、寒冷地では「通常のエアコン」だと外気温が低すぎて能力が十分に出ない場合もあるため、「寒冷地エアコン(低外気温対応のヒートポンプエアコン)」を選ぶことが重要です。
エアコンを導入・活用する際のポイントとしては、次のような点があります。
- 「暖房能力(kW)」が部屋の畳数・断熱性能に見合っているか確認する
- APF(通年エネルギー消費効率)が高い最新モデルを選ぶ
- 室外機周りの雪・風対策を行い、性能低下を防ぐ
- フィルター掃除や室外機の雪下ろしなど、基本的なメンテナンスをこまめに行う
こうした工夫により、「すべてを蓄熱暖房機でまかなう」のではなく、「必要な場面だけ蓄熱し、それ以外は高効率エアコンに任せる」という形に切り替えることで、快適性を保ちながら電気代を大きく減らせる可能性があります。実務経験のある工務店のブログでも、蓄熱暖房機から寒冷地エアコンに暖房を切り替えた結果、暖房の電気代が半分程度に下がった例が紹介されています。
蓄熱暖房機からの切り替え判断

最後に、「蓄熱暖房機を今後も使い続けるのか」「別の暖房方式に切り替えるのか」を考える際の判断軸を整理します。
スタート地点は、現状の電気代と使用量の「見える化」です。
冬の検針票やマイページを開き、次の項目を確認してみてください。
- 月ごとの総使用量(kWh)
- 電気料金の合計金額(冬とそれ以外の季節の差)
- 蓄熱暖房機をメインで使っている期間(何月〜何月か)
資源エネルギー庁の例では、月3,000〜5,000kWhの世帯で、その約7割が蓄熱暖房機、約2割が電気温水器による使用だったケースが紹介されています。
このような世帯では、「暖房と給湯をどうするか」が電気代削減の最重要ポイントであり、照明や家電のこまめな節電だけでは追いつきません。
次に、機器の状態と寿命です。
蓄熱暖房機は構造的に長寿命な機器ですが、長年使っていると内部部品の劣化や温度センサーの不具合などが出てきます。古い機種ではメーカーの部品供給が終了し、修理が難しくなっているケースもあります。修理費用や撤去費用も決して安くはないため、「故障が増えてきたタイミング」を、暖房方式そのものを見直す良いきっかけと捉えるのがおすすめです。
さらに、給湯省エネ2025事業では、高効率給湯器の導入に合わせて電気蓄熱暖房機を撤去する場合、1台あたり8万円(上限2台)の撤去加算が受けられるとされています。
ただし、工事の着工日(2024年11月22日以降)や申請期限、予算枠の上限など、条件を満たす必要があり、予算額に達し次第終了予定とされています。2025年後半時点では「残り枠が少ない」といった報道・解説もあり、利用を検討する場合は早めに施工業者や公式サイトで最新情報を確認することが重要です。
総合的には、次のような条件がそろう場合、蓄熱暖房機からの切り替えを本格的に検討する価値が高いと言えます。
- 冬の電気代が、一般家庭と比べて明らかに高い(数万円〜10万円規模)
- 蓄熱暖房機の使用年数が長く、故障や不具合が増えている
- 深夜電力プランのメリットが小さくなっている、または今後さらに縮小しそう
- 今後も同じ家に長く住み続ける予定がある(投資の回収期間を確保できる)
この場合、
- 高効率エアコン(必要に応じて寒冷地仕様)やヒートポンプ暖房への切り替え
- 高効率給湯器(エコキュート・ハイブリッド給湯器など)とのセットリフォーム
- 断熱改修(窓交換・内窓設置・天井断熱など)との同時実施
といった選択肢を比較検討するとよいでしょう。
一方で、
- 比較的温暖な地域に住んでおり、冬の電気代も極端に高くない
- 在宅時間が長く、蓄熱暖房機の「24時間ふんわりした暖かさ」が生活の質に直結している
- 機器がまだ新しく、大きな故障もない
といった家庭では、蓄熱量や設定温度・運転時間の見直し、料金プランの再チェック、窓まわりの断熱強化などを優先し、数年様子を見たうえで次の更新タイミングで切り替えを検討する、という選択も現実的です。
いずれの場合も、「なんとなく高い気がする」という感覚だけで判断せず、
1. 現在の電気代と使用量を数値で把握する
2. 使い方(蓄熱量・設定温度・運転時間)を段階的に見直す
3. 契約プランと深夜単価が今の生活スタイルに合っているか確認する
4. 他の暖房方式や給湯方式との費用対効果、補助金制度を比較する
というステップで考えていくと、後悔の少ない選択につながりやすくなります。
総括:蓄熱暖房機の電気代が高すぎると感じたときの正しい向き合い方
- 本記事は、日本の一般家庭向け電気料金と、寒冷地を含むオール電化住宅を前提にしている
- 蓄熱暖房機は、深夜に蓄熱材を電気ヒーターで加熱し、一日かけて放熱する仕組みである
- ヒートポンプ式エアコンやエコキュートは、同じ電力量からより多くの熱を取り出せるため、電気ヒーター方式よりエネルギー効率が高い
- 深夜電力プランの新規受付停止や割引率の縮小が進み、以前ほど「深夜が圧倒的に安い」とは言いにくい状況になっている
- 燃料費調整額や再エネ賦課金の上昇もあり、深夜単価を含め電気料金全体が上がっている
- 一般家庭の平均使用量は月約400kWh程度とされ、電気代は1万円台前後に収まるケースが多い
- 一方、旧式の蓄熱暖房機と電気温水器を中心としたオール電化住宅では、冬季に月3,000〜5,000kWhに達し、電気代が10万円を超える例もある
- その場合、消費電力量の大半を蓄熱暖房機と電気温水器が占めていることが多く、「暖房と給湯」が家計に与えるインパクトは非常に大きい
- 寒冷地や断熱性能の低い住宅、日中不在時間が長い家庭、パネルヒーター併用などの条件が重なると、「電気代が高すぎる家」になりやすい
- 蓄熱量と設定温度の見直しは、電気代削減に直結する基本対策であり、少しずつ段階的に下げていくのが安全
- ファン運転の時間管理や、不在時の停止、窓まわりや間仕切りの工夫など、使い方の工夫でも無駄な電力消費を減らせる
- 料金プランと深夜単価、蓄熱暖房機に適用されているメーターの系統を確認し、自分のライフスタイルに合うプランを選ぶことが不可欠である
- エアコンなどのヒートポンプ暖房と併用し、「必要な時間帯だけ蓄熱する」運用に変えることで、大きな削減効果が期待できる
- 高効率給湯器や暖房機への更新には、国の給湯省エネ事業などで補助金や撤去加算が用意される場合があり、上手に使えば初期費用負担を抑えられる
- 電気代が高すぎると感じたら、感覚ではなく「数字と仕組み」に基づき、段階的に見直していくことが、家計と快適性を両立させる近道である
蓄熱暖房機は、条件が合えばとても快適な暖房機器です。一方で、電気料金や制度の変化を踏まえずに使い続けると、思わぬ高額請求につながるリスクがあります。
「どこまで蓄熱暖房機を活かし、どこから別の暖房方式に任せるか」を冷静に整理し、自分の家と家計にとってベストなバランスを探っていきましょう。
